久楽庵 久楽庵

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久楽庵は、大田区久が原に建つ木造平屋一部二階建ての住宅です。敷地内には別棟の小間の茶室「香積庵」があり、二棟で構成されています。戦時色が色濃くなり始めた時期にもかかわらず良質の材料が選ばれ、優れた職人技術によって造られた数寄屋普請でもあります。

国の登録有形文化財に指定されている母屋は、ヴォーリズ建築設計事務所東京支店長であった松ノ井覚治により設計され、1939年(昭和14年)に竣工しました。
松ノ井覚治は、早稲田大学理工学部建築学科を卒業した後、1920年代初頭のニューヨークで意匠設計を学びました。「バンク・オブ・マンハッタンビル」主任技師としての設計を始めとする数々の実績を残し、アメリカへ留学し現地での設計活動をした最初期の日本人の一人です。

良質の材料と優れた職人技術によって
造られた数寄屋普請

母屋は平屋建ての「茶室棟」と、二階建ての「居室棟」から成り、外観はアプローチにアーチが施工されたスパニッシュ風の洋式建築。玄関ホールや応接室に入ると洋風と数寄屋が混ぜ合わされた空間、室内は本格的な茶事のできる三つの茶室を有し、数寄屋風意匠を備えた和洋折衷住宅として建てられています。

応接室の隣にはツツジの床柱をもつ三畳の寄付があり、その奥には那智黒と青石を敷きつめた寄付土間が続いています。この寄付土間の北側が「無一物」と呼ばれる茶室部分で、七畳席、四畳席二間、水屋が配されています。
居室棟は平書院付の床の間がある十畳の居間と、水屋、平書院を持つ八畳の茶の間から成り、茶室のみならず居間や茶の間も含め、すべての座敷で茶事を行うことを想定して設計されています。

本格的な茶事のできる茶室

松ノ井の設計した母屋とは別に、1980年頃、当時の居住主によって敷地の南側に別棟の茶室「香積庵」が造られました。周囲には外腰掛、雪隠、梅見門、内待合が備えられ、本格的な茶事のできる茶室であると共に、将来的には母屋同様に文化財的価値を持つ可能性が高いと考えられます。

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